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東京高等裁判所 昭和45年(ネ)3420号 判決 1976年11月17日

三四一五号事件当事者参加人 三四二〇号事件控訴人(被告) 日産自動車プリンス部門労働組合

二二号事件控訴人(被告) 東京労働金庫

三四二〇号事件 二二号事件被控訴人(原告) 日本労働組合総評議会全国金属労働組合東京地方本部プリンス自動車工業支部

主文

一、本件各控訴ならびに控訴人兼当事者参加人日産自動車プリンス部門労働組合の当審における参加請求はいずれもこれを棄却する。

二、原判決を次のとおり変更する。

(一)  被控訴人が控訴人東京労働金庫に対し本判決別紙預金債権一覧表記載の預金債権を有することを確認する。

(二)  控訴人東京労働金庫は被控訴人に対し金四、六三六万五、四八七円を支払え。

(三)  訴訟費用は第一、二審とも控訴人東京労働金庫および控訴人兼当事者参加人日産自動車プリンス部門労働組合の負担とする。

事実

控訴人兼当事者参加人日産自動車プリンス部門労働組合訴訟代理人は、昭和四五年(ネ)第三、四一五号事件に関する当事者参加の請求の趣旨ならびに同年(ネ)第三、四二〇号事件に関する控訴の趣旨として、「一、原判決を取り消す。二、被控訴人の請求を棄却する。三、(一)、控訴人兼当事者参加人日産自動車プリンス部門労働組合と被控訴人および控訴人東京労働金庫との間において、控訴人兼当事者参加人日産自動車プリンス部門労働組合が控訴人東京労働金庫に対し本判決別紙預金債権一覧表記載の預金債権を有することを確認する。(二)、控訴人東京労働金庫は控訴人兼当事者参加人日産自動車プリンス部門労働組合に対し金四、六三六万五、四八七円ならびに内金二、三八六万六、一一〇円に対する昭和四二年一一月一九日から支払ずみまで同金庫所定の六ケ月定期預金の金利による金員、内金六〇万八、五八三円に対する昭和四二年一一月一九日から支払ずみまで同金庫所定の普通預金金利による金員、および内金二、二四九万九、三七七円に対する昭和五一年四月一日から支払ずみまで同金庫所定の普通預金金利による金員をそれぞれ支払え。四、予備的に、(一)、控訴人兼当事者参加人日産自動車プリンス部門労働組合と被控訴人および控訴人東京労働金庫との間において、控訴人兼当事者参加人日産自動車プリンス部門労働組合が控訴人東京労働金庫に対し本判決別紙預金債権一覧表記載の預金債権について、七、六五六分の七、五〇四の割合による持分を有することを確認する。(二)、控訴人東京労働金庫は控訴人兼当事者参加人日産自動車プリンス部門労働組合に対し金四、五四四万四、九六〇円を支払え。五、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人および控訴人東京労働金庫の負担とする。」との判決ならびに右第三、第四項の各(二)につき仮執行の宣言を求め、なお被控訴人が当審において拡張した請求につき請求棄却の判決を求めた。

控訴人東京労働金庫訴訟代理人は、昭和四六年(ネ)第二二号事件につき「原判決を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、なお被控訴人が当審において拡張した請求につき請求棄却の判決を求め、昭和四五年(ネ)第三、四一五号事件につき「控訴人兼当事者参加人日産自動車プリンス部門労働組合の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも控訴人兼当事者参加人日産自動車プリンス部門労働組合の負担とする。」との判決を求めた。

被控訴人訴訟代理人は、昭和四五年(ネ)第三、四二〇号事件および昭和四六年(ネ)第二二号事件につき各控訴棄却の判決を求め、なおその請求の趣旨を拡張し本判決主文第二項中(一)、(二)および(三)記載と同旨の判決ならびに同(二)につき仮執行の宣言を求め、昭和四五年(ネ)第三、四一五号事件につき請求棄却の判決を求めた。

当事者双方の主張および証拠の関係は、左記のほか原判決事実摘示のとおりであるからこれを引用する。

第一、控訴人兼当事者参加人日産自動車プリンス部門労働組合(以下、単に「控訴人組合」という)の陳述

一、昭和四一年二月二四日の中央委員会以降同年四月二日の組合員全員投票に至る一連の手続はすべて、従前より存した支部組合(日本労働組合総評議会全国金属労働組合東京地方本部プリンス自動車工業支部)の正規の手続といい得るものであつて、それ故、控訴人組合が右従前の支部組合(以下これを単に「支部組合」という)と組織的同一性のある組合というべきであり、被控訴人(以下「被控訴人組合」という)こそが、同年四月三日「全金プリンス自工支部組織強化確立準備大会」なる会合に参集した少数者(一一九名)によつて支部組合即ち控訴人組合とは別個に新たに発足するに至つた第二組合(支部組合と同一の名称をとなえてはいるものの)にほかならないのである。このことは、原審において控訴人組合が主張した点のほか左の諸点に徴しても明らかである。

(一)  支部組合の構成員であつた組合員の一部が右組合員全員投票に至る一連の手続に参加することによつて支部組合から離脱し第二組合(控訴人組合)を結成するに至つたものであるとする被控訴人組合の主張は失当である。けだし、右の一連の手続に参加した者のうちには、その後右「全金プリンス自工支部組織強化確立準備大会」に参集し現在被控訴人組合に所属している者があるのであつて(尤も、右「準備大会」の参集者の全員ないし現在の被控訴人組合員全員が曽つては右一連の手続に参加したというのではなく、支部組合の中央執行委員のうち永井博以下六名の者、その他数名の者は右一連の手続に参加しなかつた。)、これらの者をも、曽つて右一連の手続に参加したことの故に支部組合から一旦離脱したものと取扱わざるを得なくなるからである。また右一連の手続中に含まれる同年二月二八日開催の臨時大会の直後の三月二日、永井博以下六名の当時の中央執行委員が東京地方裁判所に地位保全の仮処分申請をなしたことは、この時点で支部組合において組合員の離脱という状況が存しなかつたことを物語るものである。

(二)  同年二月二四日の中央委員会および同月二八日の臨時大会がいずれも支部組合の正規の会合といえるかについて仮りに疑義を免れず従つてまた臨時大会で選出された執行部代行者が正規の権限を有するかについても疑義を免れないものであるとしても、これに続く同年三月二四日の役員選挙は、右執行部代行者とは無関係に、支部組合の規約および選挙規定に基づき適法に構成された選挙管理委員会の下に、規約および選挙規定に則つて何ら瑕疵なく実施されたものであるから、支部組合の役員選挙として適法有効なものであり、従つて右選挙により新たに選出された新執行部の下で実施された同月三〇日の臨時大会およびそこでの全金脱退等の決議、同年四月二日の組合員全員投票はいずれも支部組合の正規の組合運営と認め得るのである。つまり、右役員選挙以降の手続はすべて支部組合の正規の手続といい得るのであつて、それ以前の右疑義ある諸手続もその瑕疵は右役員選挙が有効に行なわれて適法に執行部が選出された以上すべて治癒されたものというべきである。

(三)  支部組合は、上部団体たる全金(日本労働組合総評議会全国金属労働組合)に、独立性ある単位組合として組織加盟していたものであつて、全金は個人加盟の形式をとる単一組合とされてはいるが、その実体は支部組合など単位組合の連合体のごとき性格を有するにすぎない組合である。従つて、右一連の手続中に含まれる同年三月三〇日の臨時大会において全金からの脱退を決議し且つ同年四月二日の組合員全員投票において圧倒的多数の賛成投票を得たことによつて、支部組合は全金から有効に単位組合の組織体として脱退したものといえるのであつて(脱退に反対する組合員に対して所謂ひきさらいの効果を及ぼすか否かはともかくとして)、脱退に反対する者即ち全金に残留する者が存在する限り支部単位の全金脱退はあり得ずむしろ支部組合は全金所属のままで存続し右全金脱退者が支部組合から集団的に離脱したものと見るべきであるとの論は、明らかに失当である。そして、右のとおり単位組合の組織体として有効に全金から脱退した支部組合が即ち控訴人組合であつて、同年四月三日全金脱退反対者一一九名において控訴人組合から離脱し(なお、前示ひきさらいの効果を肯定する見解よりすれば、この際全金への再加盟を要することになろう)、「全金プリンス自工支部組織強化確立準備大会」なる会合に参集して第二組合たる被控訴人組合を新たに結成するに至つたのである。

(四)  同年二月二四日の中央委員会から同年四月二日の組合員全員投票に至る一連の手続が全て被控訴人組合主張のごとく支部組合の正規の組合運営とは認められないものと仮定しても、しからば他方被控訴人組合による同年四月三日の「全金プリンス自工支部組織強化確立準備大会」、これに続く同月一〇日の「全金プリンス自工支部組織強化確立臨時全員大会」は支部組合の規約に従つた正規の組合運営と認め得るかというに、いずれもそうは認められないのであるから、被控訴人組合もやはり支部組合とは別個に新組合として設立されたものと見るべきであつて、支部組合と組織的同一性のある組合ということができない。そしてこのように、控訴人組合と被控訴人組合とが共に支部組合との同一性がなくいずれも新たに結成された組合であるにすぎないものと判断される場合においては、控訴人組合としては、本件預金債権の帰属に関し後記三、(二)記載の予備的請求におけると同様の主張をなすものである。

二、支部組合の最高決議機関たる大会が執行機関の解任権を有しなくては支部組合の民主的運営を期しがたいところであり、被控訴人組合主張のような組合員全員による中執解任の無記名投票を定める規定もないのであつて、昭和四〇年一二月二二日の大会が決議した中央執行委員全員の不信任(規約第二一条第一三号に基づく)は、その解任としての意義を有すること明らかである。

三、参加請求の原因

(一)  主位的請求について

1 控訴人東京労働金庫(以下単に「控訴人金庫」という)には昭和五一年三月三一日現在、本判決別紙預金債権一覧表記載の預金が存在する。

2 右預金は支部組合が控訴人金庫に預け入れた元金およびその利息である。

3 支部組合との組織的同一性を有するのは、被控訴人組合ではなくて控訴人組合である。

4 しかるに控訴人金庫および被控訴人組合は控訴人組合が右預金の債権者であることを争うので、控訴人組合は、前示参加の趣旨第三項(一)、(二)に記載のとおり、右両名に対しこれが確認を求めると共に控訴人金庫に対し右預金の元利金の支払を求める(なお右預金のうち、定期預金二口については元金に対して満期日の翌日から支払ずみまで控訴人金庫所定の六ケ月定期預金の金利を附し且つ各満期日支払の利息金に対し各満期日の翌日から支払ずみまで同金庫所定の普通預金金利を附してそれぞれ支払う旨の合意がなされており、従つて控訴人金庫は右元金のほか右合意の趣旨に則つた利息金の支払義務を負担しているのであり、その余の普通預金六口についても右同様控訴人金庫は昭和五一年四月一日から支払ずみまで同金庫所定の普通預金金利を附して支払う義務を負うものである。)。

(二)  予備的請求について

控訴人組合としては、本件は組合分裂の場合に当らないと思料するが、もしも組合分裂の場合に当るものと判断されるのならば、それを前提として控訴人組合は次のとおり主張する。

組合分裂の際の組合財産は分裂後の各組合が共有し、その持分の割合は各組合にそれぞれ帰属すべき組合員の出資額の各合計額に応じた割合であり、当事者間に分割の協議が調わないときは裁判所に対してその分割の請求をなしうるものというべきである。そして、昭和四一年二月当時在籍の支部組合の組合員総数は七、六五六名であり、そのうちの一五二名が被控訴人組合の結成に参加したので、支部組合の財産たる本件預金債権は結局その七、六五六分の七、五〇四を控訴人組合に、七、六五六分の一五二を被控訴人組合に各分割すべきところ、当事者間に協議が調わないので、控訴人組合は右割合による分割を得たく、前示参加請求の趣旨第四項(一)、(二)に記載のとおり、控訴人金庫および被控訴人組合に対し控訴人組合が本判決別紙預金債権一覧表記載の預金債権について右割合による持分を有することの確認を求めると共に、控訴人金庫に対し右持分に相当する金員の支払を求める。

第二、被控訴人組合の陳述

一、昭和四一年二月二四日の「中央委員会」以降同年四月二日の「組合員全員投票」に至る一連の手続はすべて支部組合の正規の組合運営とは到底認められないものであつて、支部組合の方針に反対し全金からの脱退を標榜する一部組合員(多数ではあるが)が右一連の手続に参加することによつて支部組合とは別個の活動をなし支部組合から集団的に離脱するに至つたものであり、控訴人組合は右離脱者によつて結成された第二組合であるにすぎない。それ故、控訴人組合は支部組合と同一性のある組織ではなく、支部組合は被控訴人組合として終始同一性を失うことなく存続しているのである。

(一)  右一連の手続に参加した者の中にその後同年四月三日の全金プリンス自工支部組織強化確立準備大会に参集し現在被控訴人組合に所属する者のあることは控訴人組合の指摘するとおりであるが、右一連の手続に参加した右該当者は、そのうちの大部分がむしろ右離脱者集団の企図(全金脱退等の)に反対しこれを阻止するためのいわば戦略的な目的から右手続に参加したものであり、その余の右該当者も集団的離脱現象の進行途上における一時的な混乱の中で去就に迷いつつ右手続に参加したものにすぎず、その後の行動自体に徴しても、右離脱者の集団に組する確定的意思はなかつたものと評価し得るところであるから、右該当者については右一連の手続に参加したことの故に支部組合から離脱したものと認められるべきであるとの論は、当らない。仮りにそうは言えないとしても、支部組合は、終始右一連の手続には関与しなかつた中央執行委員長永井博ほか中央執行委員五名を中心として存続し、右全金プリンス自工支部組織強化確立準備大会およびこれに続く同年四月一〇日の組織強化確立臨時全員大会に至つたのであつて、右準備大会ないし全員大会に参集した者のうちに右両大会に至る過程において一旦は支部組合から離脱したと見ざるを得ない者がいるとしても、支部組合はその間においても少なくとも右六名の者をもつて団結を維持し、終始組織的同一性を保持して右両大会に至つたのである。けだし、権利能力のない社団たる支部組合において、組合員の大多数が離脱したとしても、支部組合に残留する意思を有する複数の組合員が存続する以上、社団としての支部組合は存続すること明らかだからである。

なお、永井博以下六名の者が控訴人組合主張のように地位保全の仮処分申請をしたことは争わないが、そのことが直ちに控訴人組合主張のような事態を物語るものとはいえない。

(二)  控訴人組合は、昭和四一年三月二四日の役員選挙は執行部代行者とは無関係に適法に構成された選挙管理委員会の下に瑕疵なく実施された旨主張するけれども、支部組合の規約および慣行によれば、支部組合における正規の選挙は中央執行委員会が選挙の実施およびその日程等を決定し中央委員会の承認を経て選挙管理委員会が発足することにより行なわれるのであるから、正規の選挙が執行権と無関係に行なわれ得るものでないことは勿論であるところ、昭和四一年三月二四日の役員選挙は、支部組合の業務執行権を有しない執行部代行者(けだし、この者は支部組合の正規の大会とはいえない同年二月二八日の臨時大会において選出されたのみならず、そもそも執行部代行者という機関は規約上認められた存在ではないからである。)によつて実施されるに至つたものであるから、選挙管理委員会も適法に構成されたものとはいえず、支部組合の適法有効な選挙ということはできない。

(三)  支部組合と組織的同一性ある組合は控訴人組合であるのか或いは被控訴人組合であるのかを判断するにあたつて、控訴人組合主張のような支部組合と全金との関係如何という問題は、右判断に影響を及ぼす事柄ではない。要するに、支部組合に残留する意思を有する複数の組合員が存続したものである以上、支部組合は右残留者による被控訴人組合として終始同一性を失うことなく存続しているのであつて、このことは支部組合からの離脱者による控訴人組合が全金脱退を決議したか否かに影響されることはないのである。

(四)  支部組合(即ち被控訴人組合)は、第二組合(控訴人組合)の存在が同年四月二日の「組合員全員投票」によりもはや否定しがたいものとなつたので、支部組合の残留組合員全員と確認された一五二名を招集して同月一〇日組織強化確立臨時大会を開催し、右全員大会の決議に基づいて以後正常な組織活動を再開したもので、右全員大会にはその時点における支部組合員全員の意思が反映しているのであるから、右大会の開催および決議は組合員全員の意思決定として規約の定めに優越し、支部組合の組合運営として瑕疵なきものである。

二、昭和四〇年一二月二二日の支部組合大会が決議した中央執行委員全員の不信任は、直ちにその解任を意味するものではないと解すべきである。けだし、支部組合において、中央執行委員の選任は規約上組合員の一人一票の無記名投票によるのであるから、その解任も、規約の明文にはないが、社団における民主主義の原理を貫徹する趣旨から右と同様の方法によることを要するものと解すべきであつて、そうすると、代議員制の支部組合大会における中執不信任の決議は、組合員全員による中執解任の無記名投票を発議する意義を有するにすぎないというべきだからである。

三、支部組合が控訴人金庫に預け入れた元金および利息の預金債権は、従前主張のとおり被控訴人組合に帰属するというべきところ、右金員の合計額は、原審以来の日時の経過によつて増額し、昭和五一年三月三一日現在、本判決別紙預金債権一覧表記載のとおり金四、六三六万五、四八七円となつた。そこで被控訴人組合は、当審において請求の趣旨を拡張し本判決主文第二項中(一)ないし(三)記載と同旨の判決を求める。

四、控訴人組合主張の参加請求の原因(前記第一、三、記載)について

(一)  その主位的請求原因について

控訴人組合主張の1および2の事実は認めるが、3は争う。

(二)  予備的請求原因について

被控訴人組合としても本件は組合分裂の場合に当らないと思料するものであつて、組合分裂に当るものと判断された場合の控訴人組合の仮定的主張は理由がない。

第三、控訴人金庫の陳述

控訴人金庫に昭和五一年三月三一日現在、本判決別紙預金債権一覧表記載の預金の元利金があることは認める。

なお、控訴人組合が主張するように右預金のうち、定期預金の元金に対して満期日の翌日以降支払ずみまで控訴人金庫所定の六ケ月定期預金の金利を附し、また普通預金について普通預金の金利を附して各支払う旨の合意があつたことは認めるが、定期預金の各期末の利息金に対して同金庫所定の普通預金金利を附して支払う旨の合意があつたという点は否認する。

第四、証拠関係<省略>

理由

当裁判所は、被控訴人の本訴請求は当審における拡張部分をも含めて正当としてこれを認容すべく、控訴人兼当事者参加人日産自動車プリンス部門労働組合の当審における参加請求は失当としてこれを棄却すべきものと判断する。その理由は、左記のとおり訂正、附加するほか、原判決の理由説示のとおりであるからこれを引用する。

一、原判決一五枚目裏七行目ないし九行目の「昭和四五年八月一〇日(本件口頭弁論終結の日)現在において、被告金庫に別紙預金債権一覧表記載の預金が存在すること、」を「昭和五一年三月三一日現在、控訴人東京労働金庫に本判決別紙預金債権一覧表記載の預金が存在することは当事者間に争がない。また、」と、同二七枚目裏四行目の「各課を選出区とし原則として」を「原則として各課を選出区とし、」と、同二九枚目表七行目の「各係を選出区とし、原則として」を「原則として各係を選出区とし、」とそれぞれ改め、同三〇枚目裏一一行目ないし三一枚目表七行目の「ばかりでなく、議決機関として、総会、大会、代議員会を設け、執行機関としては、常任委員会およびこれを補佐する執行委員会、業務組織および各種専門委員会、職場組織を置き、役員の種類を組合長、副組合長、書記長等を含む常任委員、執行委員会議長、副議長を含む執行委員、大会代議員、代議員とするなど、特に組合の組織面において大巾な変更をしている」を削除し、同三四枚目表一一行目の「照らして採用し難く、」の次に「いずれも成立に争のない甲第七二号証および乙第六九号証ならびに当審証人右岡勝喜の証言をもつてしても右認定を動かすに足りず、」を加え、同三七枚目裏九行目の「重要な部分」の次に「(但し、上級団体に関する規定の存否等)」を加える。

二、右引用にかかる原判決理由に詳説されてあるとおり、昭和四一年二月二四日の「中央委員会」以降同年四月二日の「組合員全員投票」に至る一連の手続(右の中間に行なわれた同年二月二八日の「臨時組合大会」、同年三月二四日の「役員選挙」、同月三〇日の「臨時組合大会」およびそこでの全金脱退、規約変更の各決議等を含めて)は、支部組合(従前より存した日本労働組合総評議会全国金属労働組合東京地方本部プリンス自動車工業支部)の正規の組合運営とは認め得ないものであつて、支部組合の構成員たる組合員の一部(組合員の大多数に当るが全部ではない)が右一連の手続に参加することによつて支部組合から集団的に離脱(脱退)するに至つたものというべく、右参加者の組織集団たる控訴人組合(控訴人日産自動車プリンス部門労働組合およびその名称変更前のプリンス自動車工業労働組合)は支部組合とは同一性の認められない別個の組合であり、かえつて、支部組合の残留者の組織集団たる被控訴人組合が支部組合との同一性を保持する組合であると認められる。

(一)  控訴人組合が主張するように、右一連の手続に参加した者の中にその後同年四月三日の全金プリンス自工支部組織強化確立準備大会に参集し現に被控訴人組合に所属する者のあることは明らかであるが、これら該当者のとつた行動(去就)の意義如何はともかくとして、前示(引用にかかる原判決の認定説示)のとおり少なくとも支部組合の中央執委行員長永井博ほか中央執行委員五名の計六名は終始右一連の手続に関与せず右手続が規約違反で無効である旨を主張し続け団結を維持したのであつて、これら残留者は少数組合員であるとはいえなお労働組合としての団体性を保持し得るに十分な人員であるから、支部組合は少なくともこれら残留者をもつて終始組織的同一性を保持し被控訴人組合となつたものであり、他方控訴人組合は支部組合からの離脱者による組織集団であるというに妨げはないのである。よつて、この点に関する控訴人組合の主張は採用の限りでない。

なお、右永井博以下六名の者が控訴人組合主張のように地位保全の仮処分申請をしたことは被控訴人組合の争わないところであるが、右仮処分申請をしたことが直ちに控訴人組合主張のような事態を物語るものとは認めがたい。

(二)  控訴人組合は、少なくとも昭和四一年三月二四日の役員選挙は支部組合の正規の選挙と認め得る旨主張する。よつて按ずるに、前顕甲第二号証、控訴人組合主張のような写真である(但し、撮影者および撮影年月日の点は除く)ことにつき争いのない乙第七号証、いずれも成立に争のない乙第九号証の一ないし四、弁論の全趣旨ならびにそれによつて成立を認め得る乙第六六号証を総合すれば、支部組合における正規の役員選挙の手続は、規約(選挙規定、分会運営規定等を含む)および慣行(その慣行には合理性があると認められる)により、中央執行委員長の召集する中央委員会において選挙管理委員会の発足が付議決定されることによつて開始されるべきものであつて、組合業務の正当な執行権限と無関係には行なわれ得ないことが明らかである。しかるところ、前示(引用にかかる原判決の認定説示)のとおり、昭和四一年三月二四日の役員選挙は、同年二月二八日の臨時大会での選出にかかる執行部代行者の下において(即ち、前顕乙第六六号証によつて明らかなように右執行部代行者の召集した同年三月一七日の中央委員会で選挙管理委員会の発足が付議されて)、同年三月一八日発足した選挙管理委員会が選挙の日程等を公示し選挙を実施したものであるが、前示(引用にかかる原判示説示)のとおり、そもそも右二月二八日の臨時大会は支部組合の正規の大会とはいうことができず、従つてその集会において選出された執行部代行者も支部組合の正当な執行権限を有するとはいえないのであるから、ひつきよう右選挙は支部組合の正当な業務執行権限に基づかないで実施されたものであつて、支部組合の正規の選挙とは認め得ないものである。のみならず、一般投票による場合、投票の結果当然に当選者が役員に就任する旨の規定があればともかく、支部組合の規約上このような規定は存しないので、当選者は改めて組合大会において就任の決定がなされることにより初めて役員に就任するものと解すべきであり、同年三月二四日の役員選挙に関しても、その当選者は同月三〇日の臨時大会において就任の決定(当審証人石岡勝喜の証言により成立を認め得る乙第六八号証によつて明らかな右大会における選挙結果の承認がこれに当るものと解される。)がなされて初めて役員に就任したものというべきであつて、右乙第六八号証および弁論の全趣旨により成立を認め得る乙第六七号証によつて明らかなとおり右臨時大会は前示執行部代行者の召集にかかるものであるから、支部組合の正規の大会とは認め得ないものであり、従つてその集会においてなされた全金脱退等の決議も支部組合の正規の決議とは認め得ないものである。

よつて、右役員選挙以降の手続がすべて支部組合の正規の手続といい得る旨の控訴人組合の主張は採用できない。

(三)  支部組合が独立の単位組合であり、上級団体たる全金から、単位組合の組織体として脱退することが許されるものであることは、前顕甲第二号証、いずれも成立に争いのない乙第三九号証ないし第四三号証に照らし肯認し得るところである。しかし、同年三月三〇日の臨時大会における全金脱退の決議が支部組合の正規の決議としての効果を持ち得ないものであること前示のとおりであつて、支部組合が右決議により全金から有効に単位組合の組織体として脱退したとの控訴人組合の主張は採用の限りでない。要するに本件において、単位組合たる支部組合がそれ自体として、少数組合員たる残留者をもつて終始組織的同一性を保持しつつ被控訴人組合として存続するものといえるのであつて、上級団体たる全金と支部組合との関聯如何は必ずしもこの判断に直接不可欠な影響を持つ事柄ではないというべきである。

(四)  被控訴人組合の同年四月三日以降の組合運営について控訴人組合主張のように若干の疑義がないとはいえないとしても、それは、既に支部組合との組織的同一性を保持し得た存在たる被控訴人組合の機関運営上の瑕疵にすぎないとみるべきものであつて、右瑕疵の故に支部組合と被控訴人組合との組織的同一性までが遡つて否定されるべきものとはいえないから、この点の控訴人組合の主張も採用できない。

三、昭和四〇年一二月二二日の大会が決議した中央執行委員全員の不信任(規約第二一条第一三号に基づく)はその解任としての意義を有するものと解すべきである。このような支部組合規約の解釈が、直ちに労働組合の本質的原理に反し許されないというのは当らず、この点に関する被控訴人組合の主張は採用できない。

四、本件の場合には、その事実関係に照らし、組合分裂の法理を導入すべき場合に当らないと認められる。

五、そうすると、支部組合に属した財産たる本件預金債権は、支部組合と組織的同一性を有する被控訴人組合にそのまま帰属するというべきであつて、控訴人組合に帰属するとはいえないことが明らかであるから、控訴人組合および控訴人金庫に対して右預金債権を有することの確認を、控訴人金庫に対して右預金の支払をそれぞれ求める被控訴人組合の請求は当審における拡張部分をも含めて正当としてこれを認容すべく、被控訴人組合および控訴人金庫に対して右預金債権を有することの確認を、控訴人金庫に対して右預金の支払をそれぞれ求める控訴人組合の当審における参加請求を失当として棄却すべきである。

よつて、本件各控訴ならびに控訴人組合の当審における参加請求をいずれも棄却し、主文第二項記載のように原判決を変更し、第一、二審の訴訟費用の負担につき民訴法九六条、八九条、九三条一項を適用し、仮執行の宣言を付するのは相当でないと認められるのでこれを付さないこととし、主文のとおり判決する。

(裁判官 江尻美雄一 滝田薫 桜井敏聖)

(別紙省略)

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